こんにちわ。えがけんです。
数年前から発売が予告されていた、インセインのサプリメント、コンセプトシリーズ 刀華絢爛。
延期に延期を重ね、いつ発売されるのか、本当に発売されるのだろうか……と、まことしやかな噂が飛び交っていましたが、先日、満を持して発売されました。
ユーザーを待たせていたことについて、何も悪びれることがなく
「ごめん、待った?」
旧知の仲の友人みたいな顔で。
絶対悪いと思ってねーだろこいつ。な顔で、ひょっこり現れました。
心配したんだぞ?まったく……。
ともかくして、今回の記事では、この『刀華絢爛』の内容紹介とレビューを行います。
この記事を読めば
- 刀華絢爛を買おうかどうかを迷っている
- 刀華絢爛の内容が知りたい
といった悩みが解決できるはずです。
目次
インセイン コンセプトシリーズ『刀華絢爛』とは?
『インセイン コンセプトシリーズ 刀華絢爛』
- 発売日: 2024年03月06日頃
- 著者/編集: 芥邉 雨龍(著), 冒険企画局(著), 村田 修(絵)
- 出版社: 新紀元社
- 発行形態: 単行本
- ページ数: 256p
- ISBN: 9784775319444
魑魅魍魎と舞い踊れ! 本書には『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』を、過ぎ去った時代の日本を舞台にして遊ぶためのセッティングが掲載されている。平安から江戸にかけてを「刀の時代」、明治から昭和初期にかけてを「華の時代」と区分し、それぞれに新データを掲載。また、新撰組隊士となり坂本龍馬を謎の刺客から護る「異説近江屋事件」、怪盗の予告状が届いた館で起きた殺人事件の謎を追う「怪盗赤外套の殺人」など四篇のシナリオを収録。 引用元:『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』 ウェブサイト
一言で言うと、『刀華絢爛』は過去の日本を舞台としたインセインを遊ぶためのサプリです。
これまで、インセインは主に以下の3つのワールドセッティング(舞台設定)が展開されていました。
・本当は怖い現代日本
・狂騒の20年代(1920年代のアメリカ)
・暗黒のヴィクトリア(1890年代のイギリス)
『刀華絢爛』ではこれらに加え、以下2つのワールドセッティングが追加されました。
・刀の時代(おおよそ、平安から江戸にかけての約千年間)
・華の時代(明治維新以降から、太平洋戦争直後の約80年間)
つまり、本書があれば
- 安倍晴明や芦屋道満と協力して妖怪退治
- 戦国時代で織田信長や武田信玄といった名将との合戦
- 新選組の羽織を纏って京都の治安維持
- 大正ロマンと哀愁溢れる、帝都東京でのハイカラな立ち回り
- 終戦直後の貧困の時代に襲い来る大怪獣と、アカデミー賞ものの大決戦
……などなど、様々なシチュエーションや歴史上の事件がインセインで遊べるのです。
なんてこった。
図:インセインのワールドセッティング早見表
これで、平安以降すべての時代で遊べるってことだね!
そういうこと!
『刀華絢爛』 内容紹介
『刀華絢爛』は下記の構成となっています。
- リプレイパート「鹿鳴館の夜は赫く」
- ルールパート「見聞なる歴史の旅」
- ルールパート「刀の時代」
- ルールパート「華の時代」
- シナリオパート 刀の時代
- シナリオパート 華の時代
順を追って紹介していきます。
リプレイパート「鹿鳴館の夜は赫く」
本書のリプレイは明治時代の鹿鳴館を舞台として展開されます。
GMを務めるのは、芥邊雨竜氏。
プレイヤーは、河嶋陶一朗氏、魚蹴氏、びぃえむ氏、古町みゆき氏の4名です。
鹿鳴館で開催される舞踏会の最中、番長皿屋敷にまつわる怪異事件が発生し……。
当リプレイは、本書収録の「華の時代」の2本のシナリオにも繋がる話となっていますので、一読してから遊ぶことをオススメします。
本リプレイで使用されている狂気は、すべて新しく追加されたものです。
時代感が反映された狂気のロールプレイは非常に面白く、参考になります。
鹿鳴館とは?
鹿鳴館は、国賓や外交官を接待するため、外国の社交場として1883年(明治16年)に建設された西洋館。
しかし、館で開催された見よう見真似の西洋風の催しは、外国人からは失笑を、国粋主義者からは「亡国の兆しだ」と、反感を買うことも多かった。
ルールパート「見聞なる歴史の旅」
「見聞なる歴史の旅」では、基本的な用語説明や、世界観設定(ワールドセッティング)の説明がされています。
『刀華絢爛』では、過去の日本で遊ぶにあたり、リアリティを追求しすぎるのではなく、ざっくりとしたイメージで、ちょっとした「ファンタジー」として遊ぶことが推奨されています。
私自身も、時代もののTRPGで遊ぶ前は「歴史や文化に対する知識が必要だよね」と、敷居を高く感じていました。
しかし、いざ遊んでみると深い知識は重要ではなく(当然、あるに越したことはありませんが)、凄まじく面白いと感銘を受けたものです。
また、このパートには、冒険企画局おなじみのランダム名前表も収録されています。
名前表に沿ってダイスロールをするだけで、「刀の時代」と「華の時代」の武家・士族、神職・僧侶などの雰囲気のある名前が簡単に生成できます。
試しにロールしてみると「鶯丸 成家」という、名前負けしそうな和人が出来上がりました。
図:名前表の使用例
他のTRPGやシナリオ自作の役にも立ちそうだね!
うん!
ルールパート「刀の時代」、「華の時代」
2つのワールドセッティングのルールパートは本書の目玉です。
収録内容は下記の通りで、それぞれ「刀の時代」と「華の時代」に対応したデータが収録されています。
・簡単な時代説明
・職業表
・いくつかのシナリオフック
・バッドエンド表
・新しいワールドアビリティ
・新しい狂気
・サンプルエネミー
・シーン表
特筆すべきは、やはり新しいワールドアビリティと狂気です。
アビリティは、各時代で18種、計36種ものデータが追加されています。
いくつか例に挙げると、「刀の時代」のアビリティとして、「燕返し(攻撃)」や「式神(サポート)」。
「華の時代」のアビリティとして、「ハイカラ(装備)」や「ピストル(装備)」など、時代の雰囲気を表したものが多々あります。
これらはそれぞれ時代特有のアビリティではありますが、GMによっては他のワールドセッティングに流用することも可能です。キャラメイクや戦術の幅が大きく広がりました。
狂気に関しても、各時代で12種、計24種のデータが追加されています。
「ええじゃないか」、「世直し」、「アナキズム」、「蟹工船」など、やはり時代に沿った新狂気が目立ちます。ロールプレイがはかどりますね。
表:『刀華絢爛』で追加されたアビリティと狂気一覧
シナリオパート 刀の時代
収録されている「刀の時代」のシナリオは以下の2本です。
・元禄髪切奇談
・異説近江屋事件
「元禄髪切奇談」
タイプ:特殊型 リミット:2 プレイヤー人数:4名
舞台は元禄。五代将軍綱吉の世。
ここ一週間、城下では老若男女が夜道の暗がりで襲われ、髪を切られるという奇妙な事件が相次いでいる。
夜中に市中をぶらつく浪人、妖怪「髪切」の噂、そして髪切虫の大発生に、一風変わったわらべ歌。
プレイヤーたちはそれぞれの使命感を抱え、この奇妙で不可思議な事件の真相を追うこととなる。
「異説近江屋事件」
タイプ:特殊型 リミット:3 プレイヤー人数:4名
異説近江屋事件は、1867年に近江屋で起きた出来事を再現した(当然、史実とは違う真実が隠されているのだが)シナリオだ。
プレイヤーたちは新選組の隊士となって、坂本龍馬や中岡慎太郎との会合に参加する。
いまだ謎も多く、真実は闇の中といわれている歴史的大事件の真相とは……。
シナリオパート 華の時代
収録されている「華の時代」のシナリオは以下の2本です。
この2本は、同じPCを使用してキャンペーンとして遊ぶとこもできます。
・怪盗赤外套の殺人
・貴賓車い号の殺人
「怪盗赤外套の殺人」
タイプ:特殊型 リミット:4 プレイヤー人数:4名
舞台は大正9年(1920年)。
とある資産家の所有する豪邸「白嶺館」の周囲はいま、警察官でごった返している。
巷を騒がせている怪盗「赤外套」から、この館にある秘宝「傾国の卵」を頂きに参上すると予告状が届いたのだ。
白嶺館に集うプレイヤーたちは、不可解な殺人事件と、インペリアルエッグを巡る抗争に巻き込まれていく。
「貴賓車い号の殺人」
タイプ:特殊型 リミット:4 プレイヤー人数:4名
舞台は大正10年(1921年)。
貴賓車「稲荷号」、通称「い号」は、山手線の外側、東京を丸ごと覆う新たな路線「帝都環状線」の目玉の一つとして導入予定であり、プレイヤーたちはそのお披露目の走行に招待されている。
一同は、優美な装飾が施された貴賓車で、夜の旅を楽しんでいたのだが、またしても殺人事件が発生し、事態は急変していく。
『刀華絢爛』の総評
総評として、『刀華絢爛』はコストパフォーマンスの良い、優れたサプリです。
データ面では、過去の日本でインセインを遊ぶために必要なデータが揃っており、戦術やロールプレイに深みをもたらしてくれます。
先に述べた通り、他プレイヤーが許可すれば「本当は怖い現代日本」など、既存の舞台・シナリオで使用することもできます。
シナリオに関しても、全体的にテーマが面白く、良質なラインナップとなっています。
4本中3本が4リミット/4PLと多少重いものの、各時代特有のロールプレイや、狂気の演出を楽しめるはずです。
また、TRPG専門のゲーム雑誌である『Role&Roll』(新紀元社)には、毎月のようにインセインの書き下ろしシナリオが収録されています。
過去には平安や江戸が舞台のシナリオも収録されており、本数もかなり溜まっています。
私としては、密かに3冊目のシナリオ集の発売を期待していたり、していなかったり。
『刀華絢爛』はどんな人にオススメ?
時代ものが好きなひと
『刀華絢爛』は過去の日本を舞台とします。
歴史的な偉人や事件、ロケーションなどを取り扱うことができるため、歴史や時代ものが好きな人に強くオススメできるサプリです。
また、インセインはシーン制のTRPGですので、自分の手番では落ち着いてロールプレイに臨むことができます。
「時代ものをプレイするのが初めて」といった人でも、遊びやすいはずです。
インセインが好きなひと
『刀華絢爛』には、多くの新アビリティや新狂気が追加されています。
これらは遊びの幅を大きく広げるデータで、場合によっては「本当は怖い現代日本」など他のワールドセッティングにも流用可能です。
もちろん新しい狂気も、これまでのゲームに交えて使用することができます。
一癖も二癖もある狂気は、確実にインセインの楽しさを底上げしてくれるはず。
単純にインセインが好きな人にとって、間違いなく買って損はないサプリでしょう。
インセインシリーズ書籍紹介
最後に、既刊のインセインシリーズの書籍を紹介させていただきます。
・インセイン マルチジャンル・ホラーRPG
いわゆるインセインの基本ルールブックです。
2013年の発売から常にTRPG書籍の売り上げ上位を走り続ける人気のタイトル。
・デッドループ インセイン2
さまざまな追加データや追加ルールを収録しているサプリメント。
追加アビリティや追加狂気データの汎用性は非常に高い。
・インセインSCP インセイン3
共同創作サイト「SCP財団」の世界を舞台に、SCPの世界で遊ぶための追加ルールや追加データを収録しているサプリメント。
・ディオダディ荘の怪奇談義 インセインシナリオ集
20本以上のシナリオが収録されている、インセイン初のシナリオ集。
・インセインシナリオ集 ブラックデイズ
インセインのシナリオ集第2弾。
25本のシナリオを収録しており、巻末には新たなアビリティのデータも掲載されている。
さぁ、狂気の濁流を味わおう
多くのユーザーに長い間遊ばれ続けているインセインシリーズですが、今回発売されたサプリ『刀華絢爛』は特にオススメできる一冊となっています。
ぜひ手に取って頂いて、共に狂気の濁流を味わい尽くしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。